この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「まぁ、構わんだろう。ただし不穏な動きをした場合には」


「あぁ、わかってる」


「…………」


何が可笑しいのか。


男はふふんと笑うと、美代の口布と体の縄をほどき始めた。


「…ぅ……ぁ……」


縄から解放された美代は怯えた目で男を見上げる。


「好きにしろ」


縄をパラリと落とす男。


「…………っ」


美代は震える足で椅子から立ち上がると、よたよたと俺に向かって歩き出した。


生まれたての小鹿のような美代


俺はすかさず立ち上がると、美代の元へ走り寄った。


「美代……っ」


俺は今にも転けそうな美代の体を受け止める。


「ぅ……あ……」


ヒゲ男のことで気が動転しているのか、美代の体は小刻みに震えていた。


「美代……ッ!!」


俺はそんな美代の体をぎゅっと抱き締めた。


「美代、美代…っ!!」


「…マサ…ル…さん…?」


美代の腕が俺の背中を確かめるように回される。


「逢いたかった…美代」


俺は優しく美代を包み込む。


逢いたかったよ、美代


もう絶対に、離さない



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