この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
そして俺は、美代を引き寄せると守るように抱きしめた。


ここから先は…


俺が体をはって美代を守るしかないのだ。




「そこか!!?」


ネズミを頭に貼り付けたまま、怒りに唇を震わせた男は俺の姿を見付けるとズンズンと近付いてきた。


後ろに固めた髪は乱れ、眼鏡の下の瞳は血走っている。


「……ッ」


狂乱した男を前に俺は生唾を飲んだ。


しかも美代を庇った状態で…銃を持った相手に下手に動けない。


「……………っ」


俺の最後の抵抗は、美代を守る姿勢でただただ相手を睨む事ぐらいだった。


グイッ


男はそんな俺の腕を掴み上げる。


「くそッ…なめた真似しやがって…!!」


男は、はぁはぁと息を荒立てながら唾を吐いた。


唾が俺の頬に当たる。



「……ッ!お前らだって…美代とヒゲ男になにをした!?」


「黙れ!とにかく来い!来ないと女を殺すぞ」


男はチャキッと銃を胸から出した。



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