この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「あ…」


ある思いが頭に浮かび、ヒゲ男は服の上から胸元をまさぐった。



……!!


やっぱり!!



服の下には何か固く細長い感触があった。


ヒゲ男は服の中に手を突っ込む。


そこには刺身用の包丁が入っていた。


刃元には“海堂 アキラ”の文字が彫られている。


それは板前の父親が、ヒゲ男二十歳の誕生日にくれた包丁だった。


マサルが寿司屋に美代を探しにきた時、手伝いをしていたヒゲ男は慌てて包丁を胸元にしまっていたのだ。



「こいつが…俺を守ってくれたのか」


弾丸の直撃により、刃をしまう木鞘は割れていた。


胸の出血は剥き出しになった刃によるものだろう。


奇跡的に命は取り止めたものの、銃弾による衝撃は大柄なヒゲ男でも気絶するほど凄まじかった。


思い出し、ヒゲ男の体に鳥肌が立つ。



「俺って超ラッキー…」



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