この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
その時









開け放たれたままの扉の外から微かに銃声や人の叫び声が聞こえてきた。


「そ、そうだマサル…」


ヒゲ男は廃墟を出た。


耳を澄ますと、生い茂る草木の遠くで乱闘が起こっているのがわかった。


ヒゲ男は、マサルや美代がまだ生きている事を悟った。


「待ってろマサル!美代ちゃん!男アキラが今行く…」


ヒゲ男はそう思い走り出そうとした。







しかし―――…


足が震えて上手く進めない。





や、やっぱり怖ぇ…


怖すぎる…




撃たれた瞬間の、男のあの冷酷な目を思い出す。


助かりはしたが…本当に死んだかと思った。


「……………」


このまま…


もうしばらく気を失ったフリだって出来る。


誰も自分を責めはしないだろう。


そんな考えがヒゲ男の頭を過った。





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