この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
―――――…




『チッ、またちぎれたニャ』


『こっちはもう枯れてきたっポよ』







ボスの手伝いに加えて銀も手伝いに来てくれたが


作業は思いのほか難航していた。


肉きゅう8本に鳥足2本。


指というものが存在しないメンバーでシロツメ草を編むことは想像以上に至難の技だった。


それに季節は初夏。


失敗を繰り返す内にちぎれたり、摘んだシロツメ草はどんどん枯れていった。


そしてまた摘みにいく繰り返し。


人間の手とはいかに便利に出来ているのか思い知らされる。


『おいマサル坊、お前猿の知り合いとかは、いニャいのかよ』


『むちゃくちゃ言うな…さすがにいねぇよ』


『猿じゃなくてもチンパンジーでも良いっポよ?』


『…………』


いや、もっとねぇだろ…


銀の天然ボケに心の中でつっこみながら、俺はふとあることを思い出した。


『そういや、銀こそ人間の知り合いいなかったっけ?』


『クルック?』


『ほら…あのピノキオの…』


『クルック~!山吹っポか?』


『そうそう、山吹!』


探し物が出てきたような快感を感じながら俺は銀を見た。


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