この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
その時


ブロロロ…と遠くでプロペラの回る鈍い音がした。


………!?


俺と美代がそちらを見ると、いつの間に復活したのか傾いていたはずのセスナ機がゆっくりと前へ動き出していた。


割れたガラスの中に人影が見えた。


「あ…!マサルさん!!あの男が乗ってるよ…!!」


「……!!」


セスナ機の操縦席では男が汗だくになりながら笑っていた。


「は…はっ…は…動いた…動いたぞぉぉおぉ!!」


先の墜落により翼は歪み窓ガラスは割れていた。


あんな機体が動くなんて、誰が予想しただろう。


しかし男の思念がよほど強かったのか、機体は奇跡的に体勢を立て直し動いていた。


セスナ機は砂浜を滑走しながらぐんぐんとスピードを増し、俺たちから離れていく。


「こ…こんな馬鹿げた奴らに誰が付き合うか!私はこんなところでヘマをするわけはいかないのだよ……」



不安定にバウンドする機体を、男は操縦席で必死に操作していく。



「ははは…さらばだッ!!」




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