この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
それから数日後の夜――…







開けられたベランダからは生暖かい夜風が吹き込み


緑地に生息している蛙や夏虫の鳴き声も一緒に流れてくる。




「マサルさん元気になったのは良いけど何してるの~?」


ゲージの中でこそこそと編み作業をしている俺に


半袖短パンにうちわ姿の美代は笑顔を見せた。


『あ、まだ見んじゃねぇ!』


「ありゃ?!隠さなくてもいいじゃんか~」


美代は笑いながら口を尖らせてTVに向き直った。


あれから3日かけて、なんとか輪になったシロツメ草。


正直、編むというよりもぐちゃぐちゃに絡ませてあるだけだけど


形も到底、ハートには見えないけど


だけど、ようやく完成まであと少し。


俺は前足と口を使って、慎重に輪の頭と尾を引っ付けた。


『か…完成した』


完成した瞬間から既にボロボロのシロツメ草の輪。


見た目は悪いけど


これには銀とボスの優しさや、俺の想いが詰まっている。


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