この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
さて…いよいよ。


『…………』


いよいよ想いを伝えると思うと不安にドキドキ暴れだす心臓。


想いは果たして伝わるんだろうか?


伝わってしまったら美代はどう想うんだろうか?


俺はゲージの中から美代を見た。


美代は丸テーブルに胡座をかいてTVを見ながら大学の課題をやっていた。


節電と節約に励む美代のうなじにはうっすら汗がにじんでいる。


美代にこの想いが伝わるだろうか…


『おい、美代…』


俺はドキドキしながら美代を呼んだ。


『美代』


美代はうちわを仰ぎながらTVを見てのんきにケラケラ笑っている。


『おいっ、美代!』


俺が前足でゲージをガシャンとならすと美代はようやく振り向いた。


「ん?マサルさん呼んだ~?」


美代は腰をあげて俺の元へとやってくる。


「ゲージから出たいの?」


美代はゲージの扉を開けると、そのまま冷蔵庫に向かった。


美代がいない隙に俺は隠したシロツメ草をゲージから出すと


課題が広げられた机の上に置いた。


机に転がったペンを見て

一言、好きとか何でもいいから添えたい気持ちになったけれど、文字がわからない。


俺は机の前にちょこんと座り、そのまま美代の姿を眺めていた。


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