この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐





     7年後









美代は、大学近くにある老人介護施設で働いていた。


3年目の介護福祉師。


仕事は大変だが、お爺ちゃんやお婆ちゃんと話すのは楽しく美代はやりがいを感じてた。





「美代ちゃん、うちの孫なんてどうかねぇ?見合いしてみるだけでも良いんだよ?」


「いやいや、河田さん、それならうちの孫のが先約だぞい」


「何を言っとる青木さん、うちの孫の方が前から言うとるがね」



談話室での河田さんと青木さんのこんな言い合いはいつものこと。


そんな二人の気持ちを嬉しく感じつつも、申し出自体は受ける気がなく


美代はいつも笑ってごまかしていた。


「ウフフ、駄目よ美代ちゃんは。この子何を言ってもデートすらしないんですから」


「ま、前原主任」


グループリーダーである前原主任の声に美代は振り向いた。



「そうなのかい?そりゃ勿体無いねぇ…美代ちゃんは気さくで愛嬌があって本当にいい子なのに」


「うんうん。うちの孫の嫁にこんな優しい子が来てくれたらなぁ」


「いやいや、だからうちの孫が先約だぞい」



そうやってまた同じ会話を始める二人。


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