この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐

マサルと美代

大きな楠の木の隣にある小さな白いアパート。


大学の近くを選んで借りたその場所は目の前に緑地公園もありなかなか快適に過ごせそうだ。




「ふぅ!もうクタクタぁ~」


駅を出て緑地公園まで歩いた美代はアパートを目前にして芝生の上に腰を下ろしてしまった。


荷物を投げだし寝ころぶ美代。


新緑の隙間からこぼれる午後の光が芝に日だまりをつくっていた。



『おい!マンションついたら荷物と段ボールの整理もやるんだぞ?さっさと歩け!』


「慌てない慌てな~い」


『引っ越し業者の時間も迫っているはずだぞ!』


「ひと休みひと休み~」


『そんなとこで寝て犬のうんこ踏んでても知らねぇぞ』


「ぐぅ―…ぐぅ―…」



俺の言葉が通じない美代はのんきに目を閉じた。


俺は入れられていたバッグから抜け出すと、のんきに寝ころぶ美代の隣に座る。



『おい美代』


「ん。マサルさんも一緒に寝る?」



美代は俺の頭を優しく撫でるとまた目を閉じた。

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