この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
そんな時だった。




ニャ~…






どこからか野太い鳴き声が聞こえた。



―――ん?


俺と美代が声の方に目をやると少し離れた位置に猫がいた。


野良猫だろうか…

ふてぶてしい態度の猫は目を細めながら俺たちを見つめている。



『なんや…知らん顔が来よったニャ』


猫は一言呟いた。




美代は鞄をごそごそすると何かを取り出し笑顔で猫をみた。


「こんにちわ猫ちゃん、良かったら食べる?」


美代の手には俺の餌のニンジンが持たれていた。



『…………』


猫はジトッと美代を見ると無言でのそのそと去って行った。



「ありゃ?お腹すいてないのかなぁ…?マサルさん食べる?」


美代は俺にニンジンを近付けた。



『………俺は人参は嫌いだ』



腹は空いたけど…

そんなあからさまな生の餌みたいなのは食えねぇ。



ちなみに伸太郎は俺にいつも人間と同じ釜の飯をくれていた。


俺は米が好きなんだ。


< 7 / 513 >

この作品をシェア

pagetop