この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
『クルックル~良かったっポ!大丈夫っポか?』


俺がだらんと伸ばした足の上に銀がちょこんと乗った。


「…ん…多分…」


まだ少し混濁している意識。


だけどそれも収まりつつあるように感じていた。


その証拠にようやく俺は自分の体の感覚が分かるようになってきた。


さっきまでは地に足がつかない感じだったけど


今の俺は美代の部屋の玄関の扉にぐったりともたれるように座りこみ、銀を見下ろしている。





「……??」


銀を……見下ろし……?


頭がクリアになるにつれ、俺は更に疑問が湧いてきた。


銀が座ってるのは誰の足の上だ?


なぜ俺は銀を見下ろしてるんだ?


それに銀が…いつもより随分小さい?



「………」


いやいや…


俺は頭がおかしくなったのかと思い目を擦った。


『マサル氏、目が違和感あるっポか?』


「いや…そうじゃなくて…」


心配する銀の声で俺が目を開けたとき


「!!!!」


俺は息が止まる程驚いた。


だって


そこにあった俺の手は肉きゅうじゃなかったから…


そこにあるのは


すらりと長い指が5本ついた手だった。



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