この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
銀の説明はなんとなくは分かったけど…



「だけど…じゃあ、なんで俺はうさぎのままじゃなくわざわざ人間に?」


魂の余りが出たんなら


単純にうさぎの俺に戻せば良かったんじゃなかったのか?


そんな俺に銀は言った。


『それは山吹が…その方が面白いとか言い出したっポよ』


「…………」


『マサル氏が美代氏を好きなんを気付いたんポね』


「…………///」


照れ隠しに思わず眉を潜めてしまった俺に


銀は機嫌を損ねたと勘違いしたのか慌てて付け加えた。


『もちろんふざけた理由だけじゃないックル~!美代氏を見守るにはウサギのままより人間の方が良いっクル~』


「見守る…?」


『クルック~美代氏は今、体に新しい魂が入り不安定な状態っポ。魂が体に馴染むまで見守る役が必要っクル』


「美代はまだ不安定なのか?」


『クルック~山吹も僕も本来の仕事で手一杯っポ。だから見守るのはマサル氏がやるっポよ!』


銀は熱弁をふるいながら俺に小さくウィンクをした。


「……い…いのか?」


銀の話しを聞きながら、


そんな夢のような役目を俺がしても良いのかと思った。


それに


俺は本当に人間の姿で、美代と会って良いのかとも思った。


だってそれは…


今までどんなに願っても叶わないことだったから――…



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