この声がきみに届く日‐うさぎ男の奇跡‐
「すげぇ…すげ~…!」


思わず声を漏らしながら


俺はアパートの中と外にかけてをなんども往復してみた。


外を歩く時には砂利が足に痛い。


人間の足は凄いけれど、裏に関してはうさぎの時よりも弱々しい印象だ。


だけど人間の体というのは


手だけでなく足の指までも器用に動かせることができると知った。


感動と喜びで少し興奮する俺。


そんな俺を不審な目で見つめていた主婦と目が合った。


「!!」


俺は思わず立ち止まる。


その主婦はうさぎ時代にたまに外に出ていた俺に


優しい笑顔でおやつをくれたこともあった主婦だった。


だけど今の主婦の視線は俺をまるで危険なものと感じている視線だった。


あんなに優しかったのに…


「…………」


あまりに違うその視線に俺はなんだか悲しくなりうつむいた。


そして主婦の視線から逃げるように大人しく玄関の前で美代の帰りを待つことにした。


< 99 / 513 >

この作品をシェア

pagetop