【短】君が僕を忘れても、僕は君を好きでいる
「さぁ、着いたよ」



君の反応を見る前に、



僕は君より先に車を出た。



それは、君の顔を見るのが、怖かったから。



君はどんな表情で、どんな気持ちで僕を見ているのか、



僕の心臓の音、聞こえてしまいそうだったんだ。



君はしばらく車から降りずに、中から夜の海を見つめていた。



僕は一人、無言のまま、ポケットからタバコを取り出した。



小さなライターの火が辺りを照らす。



その小さな光で、夜の暗闇がちょっとだけ姿を見せる。



ずいぶん長い時間だったのか、それともそうでないのか。



僕は、何本タバコを吸ったんだろう。



やっと車から出てきた君。



前の君なら、きっとすぐにでも僕の隣で海を見つめていたよね。

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