【短】君が僕を忘れても、僕は君を好きでいる
そうだよ……君の気持ちは僕にあったんだ。



君の瞳は僕だけを映していたんだから。



「夜に聞くと、波の音ってなんだか怖いね」



「そっかな?僕は、わりと好きだな……。いつ聞いても、なんだか落ちつくよ…」



今、僕と君を包むのは、真っ暗な闇と、



こうして、何度も打ち寄せては消えていく波の音だけ。



広がる大きな夜の海に溶け込む小さな僕と君。



「あのね、イサム……私ね……」



しばらくして、君は何かを決心したかのように、



僕のほうを向いて、少しだけ困ったような顔をした。

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