【短編】恋道*恋スル帰り道
「ほぇ?」
唐突な言葉に驚いて変な声が出た。
気にせず、隆太は続ける。
「ビールかな!」
「ビー‥?」
「飲みいきましょ」
あたしの言いたかった、
あたしの欲しかった言葉がキラキラ響いた。
ぽかんとするあたしに
少し口角をあげた隆太が手を差し出す。
「一杯、おごってくださいよ」
ずるい顔。
あたしが、断るわけないと確信してる顔。
悔しいけど、
まっすぐあたしを見据える瞳に、くぎづけになる。
まだ走れば終電間に合うのに‥。
気まぐれでもなんでもいい。
あたしのためじゃなくてもいい。
隆太の一言で、こんなに幸せになれる。
あたし、満面の笑顔で、
「一杯だけだからね?」
言いながら、隆太の手を掴んだ。
ふわっと立ち上がらせてくれた隆太は、
何も言わないで、今来た道を歩き出す。