【短編】恋道*恋スル帰り道
カチッとライターの火に照らされる隆太。
男の子なのに、
綺麗だな‥
なんて、思ってしまうあたしは、変なのかな?
風がふいてて、なかなかつかない。
とっさに、ライターのまわりを、手で囲ってあげる。
「ども。」
すーっと吸い込んだ息を、吐きながら、
ぺこっと小さくおじぎされる。
タバコの匂いと、隆太の
匂いがまざった。
あたしは、大きく息を吸い込む。
胸の奥が、切なく音をたてた。
このまま、時間が止まればいいのに―。
帰り道は毎回こんなことを思う。
もっと一緒にいたくて、
「飲みに行かない?」
って言葉が、何度も頭の中に浮かぶけど
二人きりの時に言えたことは一度もない。
ただ単純に断られるのが怖いし、
一歩踏み出して、引き返せなくなるのも怖い。