選択
「ごぁ!」

男が苦しみだしたのだ

「いや・・いや・・嫌ぁ!」
私は叫びながら後ずさる

「がぁ・・!」

男は自分の喉元を両手で掻きむしる様にして倒れた

倒れた後も男は小刻みに揺れ続けそして静かになった
私はその光景から目を背ける事が出来ずにいた

「なんで・・どうして・・」

狂ってしまいたい

発狂できたならどんなに楽か

目の前で苦しみ倒れ死んでいく人間・・
原因はわが子・・・

「わぁぁぁ!」

頭を抱え叫び声をあげる

嘘・・嘘でしょ・・
こんなこと・・
ありえない!

私は頭を壁に何度も打ち付ける
壊れてしまいたい!

なんで?
なんで?
なんで!?

「たくみぃ・・」

壁に頭をぶつけたままその場に座り込む

「落ち着かれましたか」

いきなり頭の上から見知らぬ声が響いた

「・・・」

答える気力もなく私は無気力に声のしたほうを見る

誰もいない

辺りをゆっくり見渡すが私と男の死体だけだ

まさか!

生きてる?

私はおそる恐る恐る立ちあがり男の近くに近寄ろうとした

「その男は死んでますよ」

またしても声が聞こえた

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