選択
しなくちゃいけないことはわかっている

これ以上感染を広げない為にも 感染した場合の治療法を見つけ出す為にも
そしてなにより巧が治る為にも

巧が感染源で巧に命の危険はないと言われたが未知のウィルスだ この先何か変化があって巧の体に異変が起こらないとはかぎらない
その為にも必要な事なんだ! 巧が可愛いなら心を鬼にして・・!

私は1時間おきにそう心を奮い立たせるが
巧の泣き声と巧の助けを求める目が私に 突き刺さる

こんなにつらい思いをさせて 治療法なんて見つからないかもしれない
そしたら巧のこのつらい思いは無駄になるんじゃないのか・・・


治療法が見つからないなら無駄に痛い思いはさせたくない・・・

いや!巧だけじゃなく他の人の為にも必要なんだ!
例え巧が治らなくても人に感染させた時の治療法だけでもわかるかもしれない・・・
でも巧が他人の為に不自由な生活して痛い思いさせられて・・巧だけがつらい思いをすればいいの?
他人の為になんで巧が・・・! 何もしていないのに!


でも巧が治らないと決まったわけじゃない!
医学は進歩しているんだから!その為にも検査はしなくちゃ!


否定と肯定を私は何度も心のなかで繰り返した

肯定が全面否定になったのは監禁されてから一週間たった後だった

この日は採取の指示がなかった

ベッドから降りられずぐずる巧を私は一生懸命あやしていた

突然部屋の隅のスピーカーから声が聞こえた

「お話があります
隣に移動してください」

声と同時にガラスの隙間が開く

私が立ち上がると巧は嫌がり私の服の袖を引っ張る

「まま・・行かないで・・」
泣き叫びすぎて声がかすれている巧は弱々しい声でお願いする

「すぐ戻るから・・」

私は巧の頭をなで

「大事なお話があるからね」
と優しく諭しガラスの隙間を潜った



ガラスの隙間が閉まったと同時に声が再び話し掛けて来る

「結論から申し上げます」

「結論?」

予想と違う言葉に少し戸惑う

なんの結論?

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