選択
そのあとの事は余り記憶がない
覚えていることは
主人が来て私を車に乗せ抱きしめ何か言っていた事と
主人がくる前に白い服を着ている人達がどこからともなく表れ由紀を初め動かなくなった子供達を運びさってしまった事だけ

主人は園舎に残っている白い服の人と話している
由紀がどこに連れていかれたか聞いているのか
もうそんな事いいよ
由紀はもう帰ってこない
帰ってくるのは由紀の抜け殻の身体だけ・・・

その事実はかえられないのだから・・

車の中で私はぼんやりと外を眺める
いつもと変わらないようにみえる
園舎から私の姿を見つけた由紀が今にも走ってきそうだ
由紀がいなくなってしまったなんて信じられない
さっきまで息をしていない由紀を抱いていたのにリアルな感触は残っているのに
あれが嘘に思えてならない
いや 嘘であって欲しい

主人が車に戻ってきた
かなり興奮している
勢いよく車のドアを閉め
ハンドルを強く握りしめている

「・・・・」

何か呟いている

「・・聞いているのか?」

主人の苛立っている声

私は窓をむいたまま

「おい!!」

主人はわたしの肩を掴み無理矢理振り向かせる

私は主人にされるがままにおぼろげに主人の顔を見た
何を怒っているの?

そんな簡単な言葉さえ主人にかける気にもならない

「ちゃんと聞け!」

主人が泣きながら私の肩を揺さぶる

「由紀は・・由紀は・・」

言葉に詰まる主人

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