選択
「戻らないんだ!」

旦那の怒鳴り声で巧の顔に不安の色が浮かぶ

「ままぁ?」

巧に大丈夫だよと小声で告げ旦那に諭すように問い掛ける

「とりあえず落ち着こう?」

旦那は母子家庭で育った
いきなりの母親の死で気が動転しているのだろう

「いましかないんだよ?
お母さんの死因をはっきりさせる事 解剖断ったらもう一生わからないんだよ」

「・・・」

「あなたがいいなら口は出さないけど 後で後悔しないの?」

医者がわざわざ解剖したいと言い出すのにはナニカあるんだろう

旦那はまだ黙っている

その時だった

私の膝にのっている小さな手がふるえているのに気がついた

「巧?」

私は巧の顔を覗き込む

この場の空気が怖くて震えているのか?

巧の顔は顔面蒼白になっている!

「巧!」

私の呼びかけと同時だろうか
巧の体が大きく揺れだす

「巧!巧?!」

目の前にいた医者が異変に気づいた
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