先見の巫女
三ノ巻
追憶
―夢を見ている
否…夢であって夢じゃない。
これは……過去…
雛菊として生を受ける前のあたしの魂の記憶。
『羽優…今日も祈りを捧げていたのですか?』
翠色の青年が、栗色の少女に笑顔を向けた。
『えぇ。最近、気が不安定なの…
神達の神気が調和しきれていないわ…』
不安そうに遠くを見つめる羽優と呼ばれた少女はため息をついた。
『少し休まれてはいかがです?あまり休まれていないと聞きました。無理をしては…』
『翠…私は大丈夫。それより、私は翠が心配よ。私の心配ばかりして…あなたこそ無理をしすぎよ!』
翠は私の護衛で永久朱雀の所有者。
翡翠龍の巫女であるあたしを守る為にあたしに仕えている。
「私は無理など…
好きでやっている事です」
「…もう…翠ったら…
私を喜ばせるのが上手ね」
困ったように笑う羽優を翠は愛おしそうに抱きしめた。
二人は恋仲だった。出会った時から惹かれ合っていた。