先見の巫女
『…それは…あなたの前世』
翠の声が聞こえた。過去見が終り、真っ暗な世界の中から聞こえた愛しい声。
「…羽優…それがあたし…?」
『はい。あなたでありあなたでは無い。羽優は羽優、あなたはあなたです。
…だから…今を…この時代を幸せに生きてほしいのです…』
翠は悲しげに、でも優しくなだめるように言い聞かせる。
「でも…あたしには使命があるの…。京を見捨てるなんて出来ないよ…」
そこには人の住まいがある。神の社がある…
人の命、神の魂がある。
「守らなくちゃ…。
今は前より守らなきゃって思うの。家族である晴明様、優しくしてくれた雀ちゃん…それから……」
いつも傍にいてあたしを
見ていてくれる人を…
「それから…朱雀を守りたいの…」
あたしは一体彼からいくつの光を貰ったのだろう。
あたしは何一つ返せてないのに…
『もう…どうか自分を犠牲になどしないで下さい…』
それでも翠はいけないとあたしに言い聞かせる。
『繰り返されるこの悲しみをどうか…』
翠の声が遠くなる。
あぁ…もう目覚めが近いのね。
……翠…
ごめんなさい…
それでもあたしは…
この道を進むしかないの…