先見の巫女


「……んっ………」


目を覚まして周りを見渡すと、外は真っ暗だった。


「ここは…確か…」


見た事の無い部屋に不安になり記憶の糸を辿る。


たしかあたしは…奥狐の神の社へ行って……


翡翠龍の力を使ったせいね…

また眠っていたらしい。今度はどれくらい?


苦笑いを浮かべて体を起こすと、ズキンッと頭痛がした。


「嫌だなぁ…やっぱり体が重い」


それでも外の風に当たりたくて庭へと出ると、真ん丸の満月が夜空を照らしていた。


「♪〜♪〜♪〜
いつか天の揺り篭
還りし母の胸に

温もり癒し安らぎ
神の愛の翼
♪〜♪〜♪〜」


子守唄を口ずさむ。それから満月に向かって両手を伸ばした。


“寂しい”


そんな声が聞こえた気がした。


一人天へと旅立つ決意をした羽優の声だったのかもしれない…







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