先見の巫女


「…そう…ですか……」


覚悟はしていたから…
驚きはすれ、動揺はしない。


来るべき運命が動き出しただけなのだから…


「雛菊殿!!入るぞよ!!」


小さく可愛らしい少年はギュッと雛菊に抱き着いた。

「わっ…帝!?何故此処に!?」


自分に抱き着いてきた男の子をまじまじと見つめる。

目の前にいるのはまだ幼い京の頂点に立つ帝の姿だった。


「帝、いきなり女子の部屋に入るのは無礼ですぞ…」


帝の後に続き、家臣は頭を下げながら部屋へと入ってきた。


「早速用件を申し上げます。先見をしていただきたいのです。魑魅魍魎による被害に京は荒れています…。帝が治める地故…このままでは帝の地位が…」


地位……?


「帝が帝で在りつづける為にも…何としても…」


やはり人間は…汚い…
こんな状況で…まだ地位の心配をしているなんて…


隣に座っている晴明様に視線を向ければ、静かに怒りを抑えながら笑顔を浮かべている。


否…怒っている……





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