先見の巫女


「可愛いってのは女子に言う褒め言葉だろう〜…
俺、男なのになぁ…」


本気で落ち込んでいたのか、暗い影を纏ったまま俯いている。


やっぱり可愛い…


「ふふっ…」

「わ、笑わないでくれよ…」


さらに落ち込む青年。
そんな姿さえも可愛い。


「遅くなったけど…
俺は星雪(セイナ)。ここら辺で万屋をしてるんだ」

「あたしは雛菊。
雛鳥の雛に花の菊っていう字の…
それより万屋って…」


万屋って何でも屋さんって事だよね?


「俺は主に妖怪絡みの万屋かな。そっちに関しては専門なんだ」


妖怪…

―シュッ

「……っ!!?」


一瞬、何かの映像が見えた。この京を覆う魑魅魍魎の影と…黒い龍、それから……


「朱髪の…………?」

「なっ…こ、これは!?
翡翠の…瞳……?」


星雪は翡翠に変わった雛菊の瞳を見つめた。


「これは…何だ…?
雛菊?雛菊!!」


星雪に呼ばれてハッとする。我に返って星雪を見上げるとそのまま意識を失った。





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