先見の巫女

鈴紋玄武



あれから数日。
星雪の家に居候させてもらって生活していた。


星雪には両親がおらず、一人で万屋を切り盛りしていたらしい。


そんな星雪を手伝いながら暮らす毎日は何もかもが新鮮で、幸せな毎日だった。

今日は二人縁側に腰かけてひなたぼっこをしていた。


「こんな生活がずっと続けばいいのに…」

「続くさ…これからもずっと」

「…うん……
でもね…いつか終わってしまうんじゃないかって…」


このままじゃいけない。
取り戻さなくてはいけない。
忘れてしまった何かを…
思い出さなくてはいけない…


頭の中で何度も誰かが呼びかける。
"早く目覚めて"と…


「あたしね…
自分が一番恐いの。
何者なのかも、時折見える不思議な映像も……」


星雪に時折見える不思議な映像の事を話した時、何も疑う事なく信じてくれた。


星雪といつか離れ離れになってしまうんじゃないか…


そう思うと恐くて体が自然と震える。
そんなあたしを星雪は優しく、でも力強く抱きしめてくれた。


この世界で唯一信じられるモノ。今のあたしには星雪だけが信じられる唯一の存在だった。







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