先見の巫女
「あなたは一体…
誰……?」
その言葉に彼は目を見開いて、それから悲しげに笑った。
「…朱雀…だ…」
その笑顔は作りモノで、無理しているのは痛いほど分かるのに……
あたし…この人のこんな顔…
見たくないのに…
こんな顔をさせているのは…
…きっとあたし。
「…朱雀………」
ほら…
名前を呼んでみれば
こんなに愛しい想いで一杯になるのに…
「あなたも四神の化身に選ばれた一人?」
不思議そうに言う星雪に朱雀は視線を向けた。
「お前…誰だ?」
その瞳は鋭く、星雪は息を呑んだ。
殺意をむき出しにしているのが一目で分かる。
「俺は星雪。ここら辺で妖専門の万屋をしてる。見ての通り四神の化身に選ばれた一人なんだ」
殺意むき出しの朱雀に星雪は人懐っこい笑顔を向ける。
「星雪は悪い人じゃないよ。あたしを助けてくれた人なの」
雛菊がそう言うと、朱雀は初めて警戒を解いた。
「そうか…悪い。俺は朱雀だ。南神朱雀の化身、永炎朱雀の使い手だ」
「朱雀か!よろしくな!!
俺は北神玄武の化身、鈴紋玄武の使い手だ」
二人でま互いに軽い自己紹介をした所でまた一人、白い装束を纏った人が現れた。
「雛菊!!」
血相を変えて駆け寄る人、あたしはその人も知っているはずなのに分からない。
「…ごめんなさい…
私記憶が……」
そこまで言うと、その人は優しい笑顔を浮かべ静かに首を振る。
「いいのです…
覚悟はしていましたから…
私は安倍晴明と申します。
あなたの父親として共に生活していた者です」
そう言う晴明様は悲しみを堪えた笑顔を見せた。
まただ…またあたしは…
こんな顔をさせてしまう。