先見の巫女


腰にさしている永炎朱雀が朱い光を放つ。
晴明様も同様に、扇凛白虎が金色の光を放っていた。

『我が名は…翡翠龍……』


二つの神の化身から発せらるたのは、雛菊の中にいるはずの翡翠龍の声だった。


「何でお前が…」

『雛菊との絆が失われた…
雛菊にはもう…我やそなた等と築いた愛しい時は残ってはおらぬ……』


翡翠龍が放った言葉は、俺達の心を粉々にするのに
そう時間はかからなかった。


雛菊…
雛菊はもう何も…


俺と出会った事
約束…


全てを忘れちまった。
そういう事なのか……?


「…雛菊……」


晴明様の声が震えているのが分かる。


『雛菊は…また地上へと戻っている。
理由は分からぬ…これも、黒闇龍の策があっての事…』


雛菊が地上に!?
会いたい…ただ会いたい…
記憶が無くても…
お前が生きてさえいてくれれば…


それは永遠の別れでは
ないのだから…







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