先見の巫女
四ノ巻
主と従者…過去編
天と地が別つ前…
神世の時代
これは今から
約1000年前の物語…
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「青龍の神子様」
年配の神官は庭の桜を見上げる少女に声をかける。
その呼びかけに顔を上げるのは羽優という18の少女。その姿は美しく、見事な栗色の髪と瞳を持っていた。
「どうかしたの?」
「村がまた一つ、妖に滅ぼされたとか…
いつこの青龍殿が襲われるかと思うと……」
まただ…と羽優は苛立ちげに神官を見上げる。
また自分の心配ばかり。
自分の命、安全…
全て自分の身を守りたいが為に力を求める。
「此処は安全でしょう。村の民の心配より、自分の心配をするの?」
羽優の厳しい一言に、神官は黙り込んでしまった。
「私は此処で守られているだけなんて嫌なの。力があるのにどうして自分の足で歩き、自分の手で救おうとしては駄目なの?」
青龍殿に神と人の間に生まれた神子として崇められた。
けれど…
広くて、大きな家。
困らない食、衣服。
ただ与えられた物を持ち、食す…
それは飼われているのと変わらない。
この檻から出ることを許されず、幼い頃からずっと此処で暮らしてきた。