先見の巫女
幸せ
――――――
―――――
――――
翠を青龍殿に迎えてから早幾つもの月日が経った。
1年に一度行われる清めの儀を前に私は翡翠龍に呼ばれ、広間へと来ていた。
「翡翠龍…今何と?」
私は自分の耳がおかしくなったのではないかと錯覚するほどに耳を疑いたくなる言葉を聞いた。
嘘であってほしい…
ただそれだけが心を支配する。
「黒闇龍が昇天に反対する神を集め反対勢力を作りあげた」
翡翠龍は二度、私にそう説明をする。
「その謀反がこの残虐な状態を生み出したというの?」
あの黒闇龍が…?
昨晩、東の地で大掛かりな虐殺が起きた。
神が人を襲い、また同族である神さえも手に掛けた事件…
それが黒闇龍率いる反対勢力の仕業だというのだ。
「黒闇龍は…
いつも力に執着はしていたものの、誰かを傷つけ平気でいるような腐った神ではないわ!!」
それが信じられず、そんな事を言う翡翠龍が許せなくて感情的にそう叫ぶ。
「だが事実だ」
互いに睨み合っていると不意に気配を感じて振り返る。
そこには…