先見の巫女
「…翠」
名前を呟いてみれば焦がすように熱くなる胸。
「ひ…くっ!」
彼の全てが愛おしくて…自分を犠牲にしても構わないと思えるほど大切な存在。
そう…だからあたしは…
「雛菊!!!!」
「…っ!!?」
誰かの声にハッとして我に返ると、心配そうにあたしの顔をのぞき込む朱雀がいた。
「…ぁ…朱雀…おはよぅ…」
その朱の髪にホッとして笑顔を浮かべると、朱雀はあたしを強く抱きしめた。
「っ!?…朱雀…?」
どうしたんだろう…
あれ……?
朱雀…震えてる…?
「朱雀…震えてるの…?」
「お前が…」
「うん」
「どこかへ行っちまいそうだ…」
まるで血を吐くように呟いた言葉。それは朱雀の悲しみや不安を感じさせた。