先見の巫女
「我が一族の存続に関わる事情故、今は口には出来んが…助けてほしい」
天狗は深々とあたしに頭を下げた。
天狗……その存在は高貴で気高い存在。
その天狗が人間に頭を下げているのだ。
それだけで信用に至る。
あたしは地に膝をつき、頭を下げる。
「その願い…承けましょう。天狗様程の方が頭を下げたのだから…信用に至ります」
そう言えば、天狗はホッとしたように息をはいた。
「雛菊…ならば私も行きましょう…」
晴明様はそう言ってあたしの隣まで歩み寄る。
「安倍晴明…翡翠龍の巫女よ…手荒いまねをした。すまない」
「いえ、私達は無事なのです。気に病まないで下さい」
そう言えば、天狗は小さな笑みを浮かべた。