いい意味で
女の人「どうですか?信じてくれましたか?」

びっくりして言葉が出ない。何を見てるんだ僕は。

女はふぅ。と力を抜いた瞬間。
光る羽は消え、路地は名残を残さず、また夜の闇に戻った。

女の人「化け猫ではないですけど、あたしはこういう妖怪なんです。」

僕「はぁ……」

女の人「心配しないでください。あなたを傷つけたりしないですから。」
僕より少し背が低いであろう女の妖怪の真剣な表情は、人間のいい人と同じように見えた。


僕「は…い。」
何故か同意の言葉が出た。いや…でも…分からないけど…。

女の人は「良かったぁ!!」なんていいながら嬉しそうに笑っている。

女の人「実はナイフで切るの、すっごい痛かったんですよぉ!怖かったぁ!」

僕「そうなん…ですか?」

女の人「そうですよ!妖怪だって痛いんです!」
そう話す女は、やはり人間のようだ。

僕「それで、俺になんか用なんですか?」
いや、やっぱり怖い。

女の人「いいえ、用というか、あなたから妖怪の雰囲気があるんです。」

僕「は?…俺から?」

女の人「はい。でも会ってみると妖怪じゃなくて。なんか不思議で。それで、秋田で会った人いたでしょ?あの人から連絡あって。」

僕「あの温泉のおじさんすか?」

女の人「そうです。」

僕「あの人もほんとに妖怪なんすか?」

女の人「ええ。あれ、わたしのおじです。」

僕「はあ…。変な人がいるなぁ。と思って。しかもあんたも同じこと言うからすげぇ怖くて。」

女の人「びっくりさせてすいません。でもおじはいい人ですよ。」

僕「そうなんすか……。」

女の人「私達妖怪は弱いもので、私達の地域にもし悪いものが来たらいけないと思って、おじから連絡を受けて見にきたんです。」

僕「俺が青森来たのわかってたんですか?」

女の人「ええ。そういうネットワークがあるもので。妖怪の。」

僕「でも…俺普通の人間っすけどね…霊感もないし。」

女の人「そうみたいですね。」
女は困った顔で考えている。
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