いい意味で
女の人「あ、あの青森にはいつまでいるんですか?」

僕「もう明日帰りますけど…・。」

女の人「じゃあ、あの明日一時間だけ時間いただけないですか?」

僕「え……なんですか?」

女の人「会わせたい人がいるんです。でも心配しないで下さい。危害は加えませんから。」

僕「いやぁ……。」
女の人は信じてくださいと言うけれど、
そう簡単に信じれるもんじゃない。そう簡単についていけるわけがないだろう。
妖怪じゃなくたってそうだ。

女の人「じゃあ朝11時にホテルの前とかで大丈夫ですか?」

僕「いや、あの……」
すると、女の人は手袋を取って、僕の顔に近づけてくるのでビクッとしたが、
「大丈夫」と優しくつぶやき、僕の頬に両手を添えた。

女の人「どうですか?人と同じ体温でしょ?」
ふわりと温かい手は、ふと、いくちゃんを思い出させた。
寒い時、よくそうやって僕の頬を暖めてくれていたんだ。
だから何だっていうわけじゃないけど。。

女の人「私を信じてください。」

そうは言うけれど、じっと真剣な眼差しで僕を見つめてる女の人を信じていいものか。
悪そうな人ではないけれど。

女の人「じゃあとりあえず、明日迎えにいきます。そのときに決めてください。」

僕「あぁ……わかりました。」

女の人「それじゃああたし帰ります!気をつけて帰ってくださいね。
それとお名前聞いてなかった!」

僕「ああ…ヨシです。ヨシっていいます。」

女の人「はい。じゃあヨシさんで!おやすみなさい!あたしあっちに車停めてるんで!」

僕「車?あんた車で来てんの?」

女の人「はい。妖怪だって車に乗るんです!それにあんたじゃないですよぉ。若菜っていいます!」
悪戯そうに笑っている。

僕「ああ、そうですか。」

女の人「そうです!じゃあおやすみなさい。それと、誰にも言わないでくださいね。」

僕「……はい。」
そうは言ったものの、言ったって誰も信じてはくれないだろう。

若菜さんは最後に笑顔を浮かべ、傘も持たずに来たのだろうか
雨の中を走り去っていった。
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