いい意味で
ロビーに行くと、若菜さんがさっきと同じソファーで待っている。

僕「すいません。遅くなりました。」

若菜「いえいえ。大丈夫ですよ。こちらこそすいません。無理言ってしまって。」

僕「俺…本当に大丈夫なんですか?何もしませんか?殺されませんか?正直やっぱ凄い怖いです。」

若菜「大丈夫です。こればっかりは信じてもらうしかないですけど…」

僕「そうっすよね…。」

若菜「はい。でも信じてください。絶対何もしません。」
真剣な眼差しだ。

うん。行こう。もう決めた。でも何が起きようと生き延びてやる。

僕「これからどこに行くんですか?」

若菜「わたしの父のところです。」

僕「お父さんのとこすか?」

若菜「そうです。」

僕「どこにいるんですか?お父さんは。」

若菜「ここから車で15分くらいのところです。あたしの実家なんですけど。」

僕「実家…ですかぁ。」
なんだか妖怪の口から実家って聞くと、変な感じがする。

若菜「すぐそこの駐車場に車停めてあるんで。」

僕「わかりました。」
ホテルから出ると、やはり寒い。
東北の春は、まだまだ遠いようだ。
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