いい意味で
僕「すいません。お待たせしました。」

昌也「あ、荷物持ちますよ。あとすいません。行く前に若菜の部屋に寄ってもいいですか?」

僕「いや、荷物は大丈夫っす。はい。若菜さんとこいきましょう。」

僕等は若菜さんの部屋へ向かう。
だがすぐ近くの部屋じゃないようだ。
エレベーターを乗っていく。最上階を目指しているようだ。

僕「そういえば、服を見たら血だらけだったんですけど、僕の傷からじゃないですよね?」

昌也「ああ、それは多分若菜の血だと思います。あの子の方から車が来たでしょう。
だから、結構出血したみたいで。」

僕「そうだったんですか…。」

昌也「あの子、車が横転した後、菊地さんを車から引っぱりだして、救急車が来るまでずっと菊地さんに呼びかけてたみたいです。救急車が着いたときは力尽きて気を失ったみたいですが…自分も怪我して痛かっただろうに……なんて親ばかですね」
と若菜さんの父は、申し訳なさそうに、優しそうに、切なそうに笑った。

そうか、それで若菜さんの声が聞こえたのか。

そうか……。

エレベーターは、最上階へ到着した。
僕は若菜さんのお父さんの後に付いていく。
他に病室は無さそうだ。

なんなんだろうここは。

すると、あるドアの前で立ち止まる。
昌也「ここです。どうぞ。」
そう言って、若菜さんのお父さんがドアを開け、僕が先に中に入ってみると。

暗い部屋の中で、ふわっと青っぽいような金色のような
昨日みた、光る蝶の羽のようなものにくるまっている若菜さんがいた。

昌也「ああ、若菜はまた寝てるみたいですね。私達は、怪我をしたときはこうやって回復するんですよ。簡単な切り傷くらいはすぐ治るんですがね、今日はちょっとね…。」

そう言って、枕元のそばに立ち、若菜さんの頭を撫でている。
昌也「さすがに、他の病室じゃみんなびっくりしちゃうでしょ?だからこうやって特別にこの部屋を使わせてもらってるんです。そして、院長は人間なんだけれど理解のある人でね。私の幼馴染なんですよ。」

僕「そうなんですか…。」
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