いい意味で
第五章 家族
第五章家族

エレベーターで一階まで降りて、病院の駐車場に向かう。
若菜さんのお父さんの車はワゴン。ファミリーカーだ。
また助手席に乗り込み、車は駐車場を出た。
もはや、ここはどこなんだろう。
青森なんだろうけど、もうどこらへんにいるかがわからない。

僕「ここから、どのくらいですか?」

昌也「そうですねぇ、空いていれば15分くらいです。でもこの時間だとちょっと混んでるのでもうちょっとかかるかもしれませんね。」

さっきは交差点で車に突っ込まれた。
さすがに、交差点を通るときはなんだか怖い。

それを察してか、
「大丈夫です。安心してください。」と優しく僕に声をかけてくれた。
少し気が落ち着く。

昌也「そういえば、秋田で私の親戚に会ったでしょう?」
親戚?
ああ、あのおじさんか。

僕「はい。温泉で会いましたよ。」

昌也「なんだかあの人の雰囲気強烈だったでしょ?」

僕「ええ。急にジロリと睨まれて、妖怪みたいだ。」って言われたもんで。。
そういうと、若菜さんのお父さんは笑いだす。

昌也「そうかそうか。でも、あの人は凄い良い人なんですよ。ちょっと変わってるけど。まぁ、見極めようとしていたんでしょう。菊地さんを。」

僕「そうなんですか…。」
「そうなんです。」といいながら、若菜のお父さんはまだ少し笑いを引きずっている。
僕も僕で、なんだか緊張がほぐれた気がした。

そこから特に話すこともなく、ラジオからは洋楽が流れている
僕は、それを聴きながらボーっと外を眺めてみる。

ふと見ると、お父さんも、若菜さんと同じようにハンドルを握った手でリズムをとっている。

やっぱ親子なんだな。

しかし、なんだかせわしない旅だ。
ここは青森のどこかもわからず、妖怪をみて、事故にあって、そして妖怪の家にいくなんて。
流れていく町の明かりが、まだ冬の色をしてる。

僕は青森で何をしてるんだろう。
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