いい意味で
昌也「さゆり、お前もう飲んでんのか?」

さゆり「そうだよぉ。ねぇ菊地さん?」

僕「すいません。先頂いてます。」

昌也「どうぞどうぞ!じゃあ、荷物を部屋にもっていっておきますね。」

僕「いえ、すいません。大丈夫です。僕行きますよ。」

昌也「いえいえ、そいつの相手でもしてやってください。」
と去っていった。

「そいつって何よねぇ?」なんてぶつくさ言いながら、また席を立ち、お菓子をもって戻ってきた。またさゆりはビールをチビチビ飲んでいる。
普通の家庭のようだが、やはり姉のさゆりも妖怪なのだろうか。

僕「あの、さゆりさんも妖怪なんですか?」

さゆり「ううん。あたしは人間。」

僕「え?」

さゆり「あたしは人間なの。お母さんの方の血を継いだからさ。」

僕「え、お母さんは人間だったんですか?」

さゆり「そうだよぉ。お母さんは人間。もう死んじゃったけどね。」

僕「そうなんですかぁ…」

さゆり「そう!!菊地さんがしんみりしないで!!世の中不思議なこと位あるさ!不思議にかんぱ~い!!」
そういいながら乾杯をしてくるさゆりは、明るさゆえに寂しそうに見えた気がした。

昌也「こら。そんな菊地さんを困らせるんじゃないよ。」
そういいながら、若菜さんのお父さんが部屋に入ってきた。

さゆりは「こまらせてないも~ん。ね~?」とイジケた振りをして、僕にふってくる。
大丈夫ですよ。と笑うが、

なんなんだろう。雰囲気だ。上手くいえないし、気のせいかもしれないけれど、
この家はなんか寂しげだ。
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