いい意味で
布団に座り部屋を見渡すと、写真が飾ってある。
下でも見た、家族四人で映ってる写真。お父さんとお母さんの若かった頃の写真。
若菜さんとさゆりさんが小さかった頃の写真。若菜さんが中学生とか高校生くらいのときの写真。
友達と海外に行った写真。

若菜さんって妖怪なのか？
普通の僕達と変わらない生活をしてきてるんだな。

なのにナイフで手を切ってみせるとか。
事故の直後、僕を守ろうとするとか、

普通出来ないだろ。普通やれないだろう。

僕の前だけじゃなくて、きっと色んなことがあったんだろうな。

勝手に人の事を想像してしまう悪い癖だけど、
それを差し引いても、きっと色々あっただろうなと思う。

頭がこんがらがる。

それに、結局なんだったんだ。僕にある妖怪の雰囲気って。
わからずじまいのまま東京に帰るのか。気になりすぎるだろ。

考えるのも疲れて、布団にバタンと寝転んでみる。

外で車の通る音が聞こえる。犬の鳴き声が聞こえる。
下からはテレビの音が聞こえる。

日常とはこんなにも不可思議なのか。

東京に帰る前に、若菜さんに会いたい。
会ってありがとうと伝えたい。
明日言ってみよう。お父さんに。

そしてもう寝よう。疲れた。

カバンからアイポッドを取り出し、アルバムを選択する。
いつも音楽を聴きながら寝るのが習慣で、人の家でもそれは同じだ。

電気を消して、音楽を聴きながら目を閉じる。
頭の中でメロディーが鳴る。いつも数曲で気絶するのだが

なんだか寝付けない。
何回も寝返りを繰り返しても落ち着かず、

結局、アルバム一枚聴き終えても寝つけない。

今日は眠れない夜か。

次の日が仕事だと早く寝なきゃ。と焦るけど。
明日は東京に帰るだけだ。気長に待とう。
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