いい意味で
本当によくわからない旅だったよ。
すげえよく分からない。モヤモヤする。

付いていくとは言ったものの、さゆりさんはずっとしゃべらない。
何か怒っているのだろうか。

景色は住宅街から広い通りにでて、商業的な建物やビルが見えてくる。
もうそろそろ駅か。

景色はどんどん洗練されていく。一昨日あいつらと歩いた栄えてるところだ。
駅の近くにあるあのデパートの名前は、青森の方言をもじった物だとお父さんは教えてくれた。
でも、そんな事はどうでもいいんだ。

駅に着き、車は止まる。
昌也「ここから、新幹線の出る八戸駅までいくんですよ。」

僕「ありがとうございます。家まで泊めていただいて、食事までご馳走していただいて。」

昌也「いいえ、大したおもてなしも出来ずすいませんでした。」

僕「いやいや、本当ありがとうございました!……あと若菜さんにお礼いっておいてください。」

昌也「分かりました。この後病院に行くので伝えておきます。ではお気をつけて。それと、もちろん我々の正体は内緒にしてくださいね。この子達も私も、普通の会社員として暮らしておりますので。どうか。」

僕「分かってますよ。もちろん言いません。じゃあ俺行きます。お元気で。」

昌也「菊地さんもお元気で。」

僕「さゆりさんもありがとうございました!」
さゆりさんは声も出さず、手で応え、振り向こうともしない。

「ありがとうございます!!」と車のドアを閉める。
さゆりさんは結局何もしゃべらなかったな。

お辞儀をしてから歩いていく。目の端で車が動くのが分かる。

これでもう会えないな。あの家までの道もよくわからないし。
すると後ろから「おーい!!菊地さーん!!」と声がする。
ん?振り返るとさゆりさんが走ってきてる。
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