いい意味で
そんな歩いてる途中、智久から電話があった。
あいつも渋谷にいるらしくて、せっかくだから僕が誘ったのだ。

用事が終わったらしいので、待ち合わせることにした。

今向かってるお店は、僕も一度行ったことがあるので
あいつらには先に行っててもらうことにしよう。

僕「あの、僕の弟がちょうど渋谷いるんで、せっかくなんで勝手に誘っちゃったんですけど…大丈夫だったすか?」

若菜「弟さん?!いいですよ!!是非一緒に遊びましょう!」

僕「じゃあ、ちょっと弟と待ち合わせてる場所が駅の方なんで、店とはちょっと離れてるんすけど、あいつらと一緒に先行ってますか?」

若菜「いいえ!せっかくだから一緒に迎えに行きますよ!」
「楽しみだ~!」なんてにこにこしてる。
おんちゃんやりう達には、後で向かうよと電話で伝えた。

そして道を二人で歩く。ふと、横顔を見る。

心地よい気温、ほろ酔い、隣で歩いている若菜、実家、写真、細かい傷がついていた寝顔、妖怪、夜、ナイフ、頬に触れた体温、声、笑顔、
心が、混ざる。

僕「そういえば、かおりちゃんとゆりかちゃんは妖怪じゃないんですよね?」

若菜「はい!違いますよ!妖怪だって普通に県立高校に行くんです!バスで!!」
だめだ。僕はこの「妖怪だって」シリーズが好きだ。聞いた途端ふきだしてしまう。

僕「若菜さんて彼氏はいないんですか?絶対モテるでしょ?」

若菜「いませんよぉ!もういなくて二年くらいになりますねえ。ヨシさんは?」

僕「マジすか?!僕はっすねぇ、四ヶ月くらいっすねぇ。」

若菜「最近じゃないですか!あたししなんかもう全然です!」

僕は「え~!!」なんて言いながら、胸がホッとしてるのを感じる。
僕は、良かった。なんて思ってるのか。

いや、本当は気付いてるんだ。本当は気付いてるよ。
若菜が笑うと嬉しい、そばにいると嬉しい。
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