いい意味で
ねこ「よしたかよぉ。お前青森の事故覚えてるよな?あれも俺だぜ。」

僕「え…あの事故…お前がやったのか?」

ねこ「そうだよ。お前を守るためだ。」

僕「守る?でも、目撃者は誰も乗ってなかったって。」

ねこ「あたりまえだ。俺は猫だぜ。いつもこの大きさでいるわけないだろう。見たやつからは見えないだろうよ。ったくこっちがお礼を言ってもらいたい位なのによ」

僕「何いってるんだよ!!すげえ大きい事故で、死ぬところだったんだぞ!!」

ねこ「死ぬところ?なに言ってんだよ。死ぬところだったのはその女で、よしたか、お前はほんの少しのかすり傷しかなかっただろ。」

確かに、僕はあの大きな事故で、ほとんど無傷だった。
智久はきょとんとしている。
若菜さんは横で、僕にしがみついている。

ねこ「な?図星だろ?まぁ、さっきは勢いでお前を弾き飛ばしちまったけどよ。よしたかと智久。お前等を傷つけるつもりなんかねぇんだ。だからどけ。」

僕「そうは言われても、どくわけにはいかねぇよ…お前がねこならなおさら、人を殺させるわけにゃいかねぇ。」

ねこ「ったくよぉ。お前が頼んだんだろ?」

僕「この人を殺せなんて頼んでなんかない!」

ねこ「俺がまだねことして生きてた頃。この家を頼んだぞ。と言ったじゃなぇか。
お前が一番若い男なんだから、ねぇちゃんとお母さんとお父さん。この家を頼んだぞ。って。」

確かに、僕と智久は数年間アメリカに住んでいたんだ。だから、東京の家にはいれなかったし、ねこに頼んだぞ。といった事は覚えている。
ねこはもう年寄りだから、可哀想でしょ!と母が言ったのを覚えてる。

そして、僕等が日本に帰国した一年後、ねこは病気で、静かに天国にいった。
今から一年前のことだ。
ねこを一番可愛がっていたねえちゃんは、泣きじゃくっていた。
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