いい意味で
あ、さっきの歩道だ。
若菜さんと智久が僕を見ている。
気付くと涙を流していた。
若菜さんが「良かったぁ。」と僕に抱きついてくる。

なんだか何も考えられない。だけど、智久もいる。
助かったの…か?

智久が「お兄ちゃんありがとう。」と言ってくる。

そうか…良かった…智久が生きてる。

僕「もう、輪廻なんとかってやつは…終わっ…た?」

若菜さんが僕から離れ、泣きながら「はい。」と言っている。

良かった。本当に良かった。
智久の傷は消えている。
良かった。。

すると、目の端からおじさんの声がした。
そっちを向くと、「ったく感謝してもらいたいぜ。」なんて言っている。

僕「あの…ありがとうございます。」

おじさん「別にかまわん。だが、お前のこれからはどうなるか俺にはわからん。」

僕「俺が妖怪になるかもしれない。ってことすか?」

おじさん「そうだ。それにまぁ輪廻が消えるかもしれないことは、想像つかないだろうから今はいいとして。やはり問題は、もしかしたらお前が妖怪になるかもしれないってことだけだ。」

僕「そうか…」

おじさん「もしなった場合、俺達の様に人間と変わらぬ容姿の妖怪になるか、醜い化け物になるか、恐ろしく凶暴な化け物になるかもわからん。だがならないかもしれん。輪廻も消えないかもしれん。俺には想像がつかん。だが肝に銘じておけ。」

僕「…分かりました」
智久がひどく申し訳なさそうな顔で「お兄ちゃんごめん。」と言ってくる。
そりゃ気にするよな。兄貴がそんな風になるかもしれないなんて。
若菜さんも心配そうな顔で僕を見る。

「気にすんなよ。別にいいよ。」
そう智久に言う。
それに正直、今はまだ頭がボーっとしていて、妖怪になるかもしれない。とか、輪廻とか、想像つかないし、実感もない。
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