いい意味で
まぁそんな感じで、先ほどのおばちゃんが近くに温泉がある。と言っていたもので
温泉でも入ろうかと、迷いながらそこにたどり着く。

「あ……」 ひどく寂しげなところだ。

建物の雰囲気は暗く、放課後や休日の学校を思い出す。
だが先ほど、外で写真などを撮っていた為
体は冷えてる。

「隠れ家的なとこかもよ?」とか「温泉に外見は関係ないっしょ!」
なんて無理やり気持ちを盛り上げ、浴室に入ると、

ひどくせまい。なんだここ。

浴槽はヌルヌルしてる。お湯はぬるい。それにしょっぱい。

賑わいなどなく、地元のおじさんであろう人が一人入っているだけだ。

この温泉はお世辞にも、
百歩譲っても、気持ち良いとは言えないもので、

おんちゃんとりうは温泉に呆れ返り、さっさとあがっていく。
僕は几帳面なもので、もう一回体を洗い、上がろうとしていた
こんな所だと尚更だ。

そのとき、そのおじさんは静かな声で僕に話しかけてきた。

おじさん「おい。お前達は旅行者か?」

僕「はい。そうっすよ。」

おじさん「そうか。」

間が開く。こういう時、自分が社交的だったらなぁ。ってよく思う。

僕「ここにはよくいらっしゃるんですか?」

おじさん「…・・お前よ、なんか嘘臭いな。妖怪みてぇだ。」

僕「は?」 問いかけとは全く違う答えだ。急に何言ってんだ。このジジィ。
冗談かどうかも良くわからねぇよ。

面倒くせぇから愛想笑いをしたが、おじさんは笑いもせず。
こっちを鋭い目でジッと見ている。

なんだこの野郎。
反応を待たず上がろうとしたとき
そのおじさんは言った

「また会うことになるかもしんねぇな。」

会わねぇよ馬鹿。心で吐き捨てて風呂場を後にした。

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