いい意味で
やっと、「ったくよう!」とおじさんはぼやき、僕の顔の直前で光る棒は消えた。

おじさん「おい若菜。こんな人間殺しちまってもいいじゃねぇか。ずっとこんな風にして人間達の迫害で俺達は苦労してきたんだからよ。化け物化け物ってよ。てめぇが痛い目遭うと急に手の平変えて俺達のせいにしやがる。」

若菜「しょうがないじゃない!!誰だってあんな目に遭えば混乱するよ!!それにヨシさんは普通の人間なのよ!誰だって妖怪だ何だって見せられて、殺されそうになって、自分が妖怪になるかもしれないなんて言われたら、混乱するに決まってるでしょ!!」

おじさん「…ったくお前は昔から優しすぎるんだ!!お前に会う前に、あの温泉で俺と会った時に、こいつらを東京に帰しとけば良かったぜ。それに親父さんに会うなと言われていただろう?」

若菜「そうだけど…。」

おじさん「まぁしょうがない。これで本当に最後だな。それにもし…お前が会いたくても、このクソ人間はもう会いたがらねぇだろうよ。」

若菜さんが僕を見るが、僕は今、自分がひどい目をしてることに気付いてはいた。
けど、それを変えることは出来なかった。

そして、ともひさを見ると下を向いていた。その後ろに渋谷の街並みが見える。
ああ、おんちゃんやりうや女の子達も待ってるんだ。

思い出したが行く気にはなれない。
だが破けていた服も元に戻っている。智久の服も治っている。
再生したのだろうか。


智久「兄ちゃん。皆の所…どうする?」

ああ、智久の不安そうな顔を見て、ふいに心が冷静になっていく。

そうか。青森では若菜さんといて事故に遭った、今回はもう大ごとにするわけにはいかない。
「ああ。」と答えてみたものの、この人達と一緒にいて、また何か起こらないだろうか。
僕はもう家に帰ってしまいたい。でも智久と若菜さんを二人にするわけにもいかない。

でも若菜さんを戻さないと、かおりちゃんとゆりかちゃんも心配するだろう。
しかし今は何時なんだろう。空を見てもまだ夜だ。
携帯をバックから取り出してみると、何回もおんちゃんやりうから着信がある。
時間を見ると、まだ夜の一時過ぎ。
じゃあ…あの店を出た一時間ちょいの間にこんな事が起きているのか。


もう何時間も経った気がする。
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