いい意味で
もう何時間も経った気がする。

おじさんを見ると、僕の事を何か怪訝そうに首をかしげながら見ている。
さっきの怒りとは別のような顔で。

どうしようか。電話、かけ直すしかないよな。
僕「なぁ、どうするよ?戻るか?」

智久「戻るしかないよね。若菜…さんも?」

若菜「はい。かおもゆりもいるので…。すいません。」

おじさん「なんで若菜が謝ってんだ。お前は何も悪いことしてないだろう。被害者なんだぞ。」

若菜「でも…」

おじさん「でもじゃない。…だが友達もいるのか。こいつらといてまた若菜に何か起こったら大変だな…」

僕「なんで俺らのせいなんだよ。」

おじさん「うるせぇ野郎だなお前は。しょうがない。俺はその店の前で見張っててやるから友達といろ。そして適当に出てこい。何かあったらすぐ行ってやるから。」

若菜「でも、おじちゃん・・」

おじさん「いいから。心配するだろ若菜の友達が。」

若菜「ありがとう。じゃあ、お店に行ってすぐ出てくるよ。」
おじさん「どっちでもいい。好きにしろ。」
そして僕に目で合図してきた。

それでいいならそれでいい。僕はおんちゃん電話をして場所を聞いた。
「何してたんだよ~!!」と酔っ払った声で言ってくる。
後ろがうるさい。みんな盛り上がってんだな。
僕達がこんな目に遭ってた間も。

そして智久はサンプラーをぶら下げ、僕も立ち上がった。

そのカラオケ屋まではここから歩いて10分位。
その間、誰も喋りはせず、街の音がどんどん大きく聞こえていく。

皆がいるカラオケ屋に到着して、おじさんは外で待っているといった。
若菜さんは、「ゆりとかおには体調悪くなっちゃったから、先に帰ると伝えますね。」と言っていた。

そう若菜さんが言えば、かおりちゃんもゆりかちゃんも、じゃあ一緒に帰ると言うだろう。
僕等は適当にマンガ喫茶かなんかで、始発まで時間をつぶせばいい。

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