いい意味で
僕「毎回すいません。東京来た時に会ってもらって。それに調べてもらって。」

実「いいんだよ別に。それよりお前最近変わった事はないか?」

僕「いや、特にないっすねぇ。いつもどうり、たまになんか違和感を感じるだけで。」

実「そうか。その違和感ってのが気になってよ。調べてたんだよ。昔の文献をよ。」
ビールが着いて、おじさんは一息でジョッキ半分を空ける。
「ぷは~!うめぇなぁしかし!!」なんて言いながら。

僕「それでなんか分かったんですか?」

実「それよりまず、若菜とは連絡取ってるのか?」

僕「いや…前と同じで、とってないですね。」

実「今もあいつなぁ、いつも気にしてるんだよ。お前の事。ヨシさんは大丈夫なの?ってよ。」

僕「そう…すか…。」
心に若菜さんの顔が浮かぶ。

実「これはもうお前次第だからあれだけどよ。若菜のこと位信じてやってもいいんじゃねぇか?」

そうだ。信じれないのは弱い僕のせいだろう。おじさんはこんなに僕によくしてくれるし、
悪い奴じゃないってのは、八割方思ってる。だけど、もし若菜さんを信じきった時に騙されたら、僕はもう立ち直れないだろう。

実「…まぁお前の気持ちも分からなくもない。妖怪だなんだって見て混乱もするだろう。そして、信じるってのは大変な事だ。ほら。俺弁護士だろ?裁判でな、元は一番近い人同士だったのが争うってのを良く見る。それほど、人と人が信じあって繋がり生きていく。ってのは奇跡のような物なんだ。」

僕「はい…。」

実「だからよ。ほんの小さなズレで、人ってのは簡単に憎しみあったり、傷つけあったりする。」

僕は何も言えず、ビールをグッと飲む。
喉がヒリヒリする。味が良く分からないのは、若菜さんのことを考えてるからだろう。
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