いい意味で
実「若菜に心が近くなるほど、近づくほど、お前は妖怪に近づく。」

僕「どういうことすか…?」

実「いわゆるよ。人を愛する事や、大切に思うってのはよ。魂がそれだけその人に近づくって事だ。似たもの同士とかなんか色々あるだろう。一緒にいると段々似てくるとかよ。そしてお前が輪廻交換をしたのは妖怪だ。よく考えりゃ当然のことだな。好きな女が妖怪なら、妖怪になるってことだ。人間なら人間でいれる確立が高い。俺はそう思う。なんていえばロマンティックな話だけどよ。そう単純にいかねぇのがこの話だ」

僕は何も言えずにいる。若菜さんを想ったら…僕は妖怪になる…のか…

おじさんはグイッとビールを飲み干し、店員にもう一杯頼んでから僕に話始める。

実「そしてな、一つの文献にこう書いてあるものがあった。」

そうして、おじさんが聞かせてくれたその話は、あまりにも僕には苦しいものだった。
僕に、その道をあるくのは無理だ。そんな事が起こりうるなら、僕は若菜さんを想えない。
なぜあの時僕が急に若菜さんに怒りだしたのかも、その話に似ていた。

そして、気付いた。僕の心の中にいるのは、若菜さんだっていうことに。

何も言えないでいる僕におじさんは言った。

実「あのよ。若菜はお前の事を想ってる。お前も若菜の事が好きなんだろう。だが若菜の叔父としても、あの子の幸せを願いたい。そして、お前の幸せもだ。だから、もう断ち切った方がいい。お互いの為に。」

僕「そうですね…。なんか、俺の中で若菜さんいう存在が凄い大きい事に今気がつきました。」

実「そうか。あの子も喜ぶだろう。お前がそういってるのを聞いたら。」

それに合わせて笑ってみる。ビールを飲み干して、おじさんと僕の分をまた頼む。

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